『新しい太陽の書』(あたらしいたいようのしょ、The Book of the New Sun)は、ジーン・ウルフが1980年から1987年にかけて発表した長篇小説のシリーズ。当初4作が発表され、後に完結編が書き継がれ、全5冊で構成される。
The Shadow of the Torturer (1980) 『拷問者の影』
The Claw of the Conciliator (1981) 『調停者の鉤爪(つめ)』
The Sword of the Lictor (1981) 『警士(リクトル)の剣』
The Citadel of the Autarch (1982) 『独裁者の城塞(しろ)』
The Urth of the New Sun (1987) 『新しい太陽のウールス』
サイエンス・ファンタジーと呼ばれるジャンルに属する作品である。世界観は一見するとJ・R・R・トールキン風のファンタジーであるが、次第に舞台が寒冷化が進む未来の地球であることが明らかになり、さまざまな現象にも科学的整合性のある説明がつく。一方で、本作は主人公が綴る手記という設定だが、いわゆる「信頼できない語り手」の手法を取っており、どこまでが真実なのかは曖昧になっている。
作者のウルフにとっては初のベストセラーであり、また数々の賞を受賞し、その名声を高めた作品である。
用語などが難解なため、ウルフ自身によって『川獺の城(The Castle of The Otter)』というエッセイ風解説書が著されている(1982年)。
続篇シリーズとして、同じ世界を舞台としたThe Book of the Long Sun、The Book of the Short Sunも出版された。
日本では、当初の4部作が完結した後、1986年から1988年にかけて翻訳出版された。20年後の2008年に新装版が刊行された際、未訳だった第5作が初めて出版されている。