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『賜物』(たまもの、ロシア語: Дар、英語: The Gift)は、ウラジーミル・ナボコフがロシア語で書いた最後の長編小説で、ベルリン在住中の1935年から1937年に執筆され、ウラジーミル・シーリンの筆名で『現代雑記』に連載された。かなり難解ながら、ロシア語時代のナボコフの最高傑作の一つと考えられている。
本書の第4章にあたるニコライ・チェルヌイシェフスキーの伝記小説は、雑誌から掲載を拒否されたため、1952年にニューヨークで完全版が出版されるまで活字化されなかった。ナボコフの息子であるドミートリ―が第1章を英語に翻訳し、マイケル・スキャメルが残りの4章の英訳を完成させた。ナボコフ自身も1961年に全ての章の翻訳をチェックし、英語初版が1963年に出版された。
小説の主人公はロシア革命後にベルリンに亡命してきた若き作家であるフョードル・コンスタンチノヴィチ・ゴドゥノフ=チェルディンツェフである。彼の文学的野心と芸術家としての成長、ジーナ・メルツとの恋愛がこの小説の軸になっている。第5章(最終章)で、フョードルが『賜物』とよく似た小説を書く構想を語る通り、この本全体をメタフィクションとみなして主人公のフョードルが晩年に書いた小説だと考えることも可能であるが、これが唯一の解釈ではない。
ナボコフはBBCのインタビューに答えて、フョードルの存在は自分が書いた登場人物は全員がグロテスクで悲劇的な人生を送ったわけではないことを示す良い例だと語っている。彼いわくフョードルは「本物の愛と、自分の才能に早くから自覚的であるという恩恵に浴している」。