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雪女

雪女とヒミツのやくそく画像
雪女とヒミツのやくそく
(ISBN: 9784337336667)
¥1,540
在庫あり
国土社
西村さとみ/ao

受賞一覧

1992

第44回読売文学賞

第30回藤村記念歴程賞

1980

第8回泉鏡花賞

1978

第5回川端康成文学賞

Wikipedia情報

雪女(ゆきおんな)は、雪の妖怪。別名として「ユキムスメ」、「ユキオナゴ」、「ユキジョロウ(雪女郎)」、「ユキアネサ」、「雪オンバ」、「雪ンバ」(愛媛)、「雪降り婆」とも呼ばれる。「ツララオンナ」、「カネコリムスメ」「シガマニョウボウ」など、氷柱に結びつけて呼ばれることも多い。 一応、冬に現れる、女性の姿をした妖怪で、雪の精ともいわれ、国文学者・古橋信孝によれば昔話・伝承が青森県、山形県、秋田県、岩手県、福島県、新潟県、長野県、和歌山県、愛媛県、大分県などで確認されている。雪女の正体は雪の精、雪の中で行き倒れになった女の霊などと様々な伝承がある。 牧野陽子が今野圓輔の著書から引いたところによれば、雪女は 1雪の精霊とされるもの 2雪山で死んだ者の亡霊ということになっているもの 3ややコミカルなもの に分類される。千葉幹夫や小松和彦『日本怪異妖怪事典』によれば、これの分類における「3ややコミカルな」笑い話になるものは「しがま女房」のようなつらら女があたる。 大島広志は産女を雪女だと伝える山形県最上郡の伝承を紹介し「子供を連れて出現する」雪女像について「産女(うぶめ)の伝承とも通い合う」とする。この「幽霊としての雪女像」について、多田克己は『妖怪図巻』の解説で、山形県小国地方の、雪女郎(雪女)は元は月世界の姫であり、退屈な生活から抜け出すために雪と共に地上に降りてきたが、月へ帰れなくなったため、雪の降る月夜に現れるとされる伝承を引き、雪女の「元天女」で、「養子を増やすために子供を攫う」という中国の姑獲鳥伝説と類似した点、それが日本へ伝播し、産褥で死んだ女性の幽霊「うぶめ」と同一視あるいは混同され、独自の「姑獲鳥(うぶめ)像」ができた点から、妊娠したまま死んだ女性の霊である雪女はウブメの一種であるため幽霊だと解釈された可能性を示唆し、『幻想世界の住人たちⅣ』で、吹雪の晩に子供(雪ん子)を抱いて立ち、通る人間に子を抱いてくれと頼む話を紹介し、その子を抱くと、子がどんどん重くなり、人は雪に埋もれて凍死するという点を指して姑獲鳥との接点を指摘している。なお頼みを断わると、雪の谷に突き落とされるとも伝えられる。かつ、次第に増える、雪ん子の重さに耐え抜いた者は怪力を得るとも言われ、村上健司によれば、弘前では、ある武士が同様に雪女に子供を抱くよう頼まれたが、短刀を口に咥えて子供の頭の近くに刃が来るようにして抱いたところ、この怪異を逃れることができ、武士が子供を雪女に返すと、雪女は子供を抱いてくれたお礼といって数々の宝物をくれたという。『日本怪異妖怪事典 東北』によれば雪女から依頼され子供を抱いていた侍が、彼女から母乳を提供され、相撲で負け知らずとなったという五所川原の伝承がある。 なお今野圓輔の分類、山姥、磯女、雪女のうち、山姥や山女、濡れ女あるいは磯女が人の生き血を啜るとされる件について、彼女らが子供を伴って現れる点から「産後の失血を補う」ため血を欲していると指摘する民俗学者の宮田登は、その系統、吸血鬼的な山姥と関連する存在として「子供を伴い、精気を吸い取る」雪女が血をすするとされる可能性のみを示唆しているが、『日本怪異妖怪事典 九州、沖縄』によれば大分県の吸ヶ谷で、雪山に閉じ込められた椎茸取りの男性が雪女郎(ゆきおなご)に血を吸われたという伝承があり、また具体的な地域は不明ながら、小泉八雲も「地方によっては血を吸うといわれる」と書く。 ある特定の日に訪れ、去っていく点からいわゆる「歳神(としがみ)」としての性格を持つという説が何人かによって提唱されている。千葉幹夫は五所川原市辺りでの「12月30日から元旦までの夜」に訪れ、元旦を含めた日から巳の日に帰るため「みのっこ」とも呼ばれる雪女についてそれを、大島広志は、正月元旦に人間界に雪女が来て帰っていく青森県弘前市の伝承や岩手県遠野市の、小正月または冬の満月の日に雪女が多くの子を連れて遊ぶという伝承、吹雪の晩に雪女を親切にもてなしたところ、翌朝、雪女は黄金と化していたという、「大歳の客」系の昔話を引いて雪女の年神的性格を指摘している。ただ一応青森県で、「年取りの晩に現れ、巳の日に帰るがその間稲の花を食う」とされる「巳のっ子」は、雪女と区別する地方もある。 通常は「一般的な人間の」背丈をしているとされる。が室町時代末期の連歌師・宗祇法師による『宗祇諸国物語』には、「身長1丈ほど」の雪女を見たと記述がある他、小泉八雲は松江市で、「夜は立木よりも高くなる」「真っ白でやたらに大きな顔をした」雪女の話を聞いており、滋賀県のある地方では、島左近が「1丈ほどの」雪女郎にあった、という伝承がある。さらに朝里樹は『日本現代怪異事典』で松谷みよ子編『現代民話考』9巻所収の、鳥取県伯耆の神社にあるシイノキに、夏には片腕が七尋ある七尋女房が、冬には巨大な女性の姿をした雪女が現れ、悪い子供を木の洞へ入れると言われる伝承を引き、『あさいなしまわたり』『古今百物語評判』で「巨大な」とされるものがあることから、近世に「大女」としてのそれが成立した可能性を示唆している。鳥取県以外に、子供のいたずらを窘めるための方便として語られる場合があり、遠野では、「牛(べご)つれた」雪女が、悪童へ折檻のため乳をかける、悪い子供を探す、また関東で、大雪の降った日に立つ雪女郎は悪い子を連れてゆくと言われる。 具体的な服装は、岡山県美作に出る者は「花嫁衣装で綿帽子を被った」とされる、また稲荷山が鳴ると「ざんばら髪で口に櫛を咥えた」白い着物姿のそれが出るとされるなど共通して白装束の女性とされ、江戸時代に吉原遊郭で行われる八朔(8月1日)の儀礼において花魁が纏う白い衣装は「雪女郎」と言われ、当時「越後の国の雪女郎」という言い回しが成立し流通していたという。 岡山県の伝承では水を要求するが、水を提供すると膨れ煮え湯をかけると消えると言われ、京都府では正月の餅をついていた老婆が雪の降る日にも関わらず「何も被っていない」女性がいたので湯をかけるぞと脅したところ消えたと、「湯をかけると消える」などと言われる。 「雪女」と「雪女郎」は同じ造形の妖怪であるが、「ユキンボ」と呼ばれる妖怪は京都府大宮市のものは松脂で出来た乳房を囲炉裏などで溶かして人へ投げる女性とされ、和歌山県では、「1本足」で円形の足跡を付ける「少年」とされる。 また、長野県諏訪郡で「シッケンケン」と呼ばれるものは、一本足で飛び跳ねて移動し、道行く人を縄で縛ると言われる。『綜合 日本民俗語彙』では、近畿地方から四国にかけての地域で言い伝えられていた「イッポンアシ」という「雪の上へ足跡を付ける」妖怪が、八丈島での「竹をついて歩く」一本足の山姥を関連付けている アイヌの伝承の中にも、ウパシメノコという「雪の女性」を指す語で称される妖怪が語られていた。 なお、「雪男」という呼称は近代になってから、イエティやビッグフットの訳語として使われているが、青森県に「雪男」と称される何者かの巣を襲った猟師が寒くて断念したという伝承がある上、宮城県七ツ森には冬になると巨大な体に真っ白い毛をした「雪男」が地域を揺らし、春には消えるという話が、また徳島県で雪男が「雪の降った翌朝、幅が1間ほどの足跡」を残すと言い伝えられている。さらに、富山県では、雪の中から出る「ユキオン」という妖怪が伝わっており、子供を脅す際に「ユキオン来るぞ」という形で使われていたが、これの具体的な形他が伝わっておらず、資料により「雪女」の他「雪鬼」と表記されるものもあるという。